”オムニチャネル”という言葉、最近よく耳にしませんか?どういう意味かご存知でしょうか?
もちろん知ってますよ!という方も、今初めて聴いた…という方も、今回は”オムニチャネル”について、その意味やマーケティングへの活かし方など、企業での実例も交えてご紹介いたします。
”オムニチャネル”って何?
”オムニチャネル”をWikipediaで調べてみると
顧客が購買できるあらゆるチャネル(販路、顧客接点)から購買ができるよう、
流通経路をつなげること。
とあります。
一方コトバンクで調べると
顧客が、実店舗やネット通販といった販売経路の違いを
意識せずに買い物できる流通環境。
となっています。
どうでしょう?わかりましたか?
ちょっと難しいな…という方、図でご説明します。
「シングルチャネル」は最も分かりやすい販売の形ですよね。町の八百屋さんをイメージしてみてください。お店にいって、欲しいものを選んで、買う、といったごくシンプルなものです。
「マルチチャネル」になると、お客様との接点は複数に増えます。Aさんは店舗で、Bさんは商品カタログを見ながら電話で注文、Cさんはオンラインショップで、というように、売り手との接点はお客様ごとに異なる形です。
「クロスチャネル」は「マルチチャネル」と同じく複数の販売チャネルを提供していますが、異なるのは1人のお客様に対して複数の接点があることです。Aさんは店舗でも商品カタログでもオンラインショップでも、同じ商品を購入することができる、という形です。「うちは実店舗が神戸にあって、ECサイトも最近始めたんだよ」という方は、クロスチャネルに当てはまりますね。
「オムニチャネル」は「クロスチャネル」と似ているように見えますが、いくつかの重要な違いがあります。
まずお客様との接点がシームレス、つまり継ぎ目・境界がない状態です。例えばスマートフォンで欲しい商品を見つけ店舗在庫を検索したら、A店に3つあると分かったので、店舗に行って購入する、という場合、購入したのは店舗ですがそこまでの経緯を見るとスマートフォンを使い、在庫検索の機能をインターネット上で使っていますよね。これがシームレスな状態です。
次に、小売り側の対応としての違いは、チャネルを横断して商品・顧客・販促の管理を行うという点です。先ほどの例で言うと、スマートフォンで店舗在庫を検索したとき、正確な個数が確認でき、それがどの店舗にあるのかまでお客様は知ることができました。これは商品の管理を店舗ごと、オンラインショップごと、とバラバラにするのではなく、複数のチャネルを横断して管理している、ということです。
いかがでしょう?オムニチャネルについて、少しは理解が深まったでしょうか?
”オムニチャネル”をどうやって取り入れるの?
初めて聞く言葉で、なんだか難しそう、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、既に多くの企業が”オムニチャネル”に取り組んでおり、成功している事例もたくさんあります。資金が豊富にある大手企業だからできるものだろう、というイメージが強いかもしれませんが、中小企業でもやり方次第で効果を得ることも可能です。
スマートフォンがここまで普及し、いつ、どこにいても、誰でも、同じ商品を購入でき、同じサービスを受けられることが求められている今の時代、オムニチャネルは企業の規模に関わらず、取り入れていくべき手法です。
では早速、企業での事例を見ていきましょう。
事例1:無印良品(株式会社良品計画)
株式会社良品計画は、ブランド「無印良品」の専門店を運営し、商品企画・開発・製造・販売している会社です。
無印良品はオムニチャネル戦略のひとつとして「MUJI passport」というスマートフォンアプリをリリースしています。
このアプリでは、まずスマートフォンのみで買い物をすることができます。商品ごとにコメントを投稿することもでき、実際に購入した人のレビューを見られます。さらに実店舗の在庫検索も同時に可能です。お客様はこのアプリで買い物をすることも、在庫のある店舗を探して最寄のお店で実際の商品を購入することもできるのです。
実店舗での買い物をする時はこのアプリのバーコードを提示すれば、「MUJIマイル」が貯まります。このMUJIマイルは買い物をしなくても、店舗に立ち寄ってチェックインするだけでもらえたり、口コミの投稿でももらえる仕組みになっており、マイルが貯まればショッピングポイントとして使えるようになっているわけです。
これまでも実店舗でポイントカードを作り、購入ポイントが貯まる仕組み、というのは多くありました。オンラインショップでも、会員登録をしてもらえば購入ポイントが貯まりますよ、というのは最近ではごく一般的です。
しかし、オンラインショップでのポイントを実店舗では使えなかったり、それぞれのポイント有効期限が違っていたり、連動する仕組みになっていない場合がほとんどではないでしょうか。
「MUJI passport」はスマホアプリを使ってオンライン・オフラインをシームレスに繋げることが出来ています。
事例2:ユニクロ
ユニクロは今年、セブンイレブンとの連携をスタートしました。ユニクロのオンラインショップで購入した商品を、最寄のセブンイレブンで受け取ることができるようになった、というもので、受け取り手数料もかかりません。
オンラインショップで購入し、自宅に届けてくれるのは今ではごく一般的なことになりましたが、今度は宅配便を受け取る時間がない、すぐ欲しいからオンラインショップで買ったのに配送されてから受け取るまでに時間がかかってしまう、というお客様も出てきました。コンビニでなら24時間いつでも、スムーズに購入したものを受け取ることができるようになります。
実店舗に行かなくてもオンラインショップで商品をゆっくり選ぶことができ、購入を決めたら今度は自宅で待たなくてもコンビニで受け取ることができる、これもオンラインとオフラインをシームレスに繋げた事例のひとつではないでしょうか。
ユニクロも無印良品と同じくスマホアプリがリリースされており、店舗在庫も見ることができます。
まとめ
スマートフォンが普及し、スマートフォンで使えるアプリやサイトが次々に登場している今、お客様が何か購入する時にかける時間は変化してきています。買おうかな、と検討している時間、実際に購入するタイミング、購入後の使用や消費、それぞれお客様ごとに異なってきますが、購入の前後の時間はほとんどがスマホの中で起こっているのではないでしょうか。
靴を買おうかな、と考える→どんな靴が買えるか検索する→この靴がいいな、と思う商品を見つける→その靴を買った人の口コミや使用感のレビューを見る、とこの程度の検討する時間はスマホの中で出来てしまいます。この間お客様は店舗に行かなくても良いですし、当然「今検討中です」と言う必要すらありません。アプリやウェブサイトで完結してしまいます。
購入した後はその靴を履いた写真をSNSにアップし、買ってよかった・履き心地がいい、などまた口コミを広げていきます。これもまた全て、スマホの中でできることです。
スマ―トフォンを軸とし、既存のチャネルを繋ぎ合わせることがオムニチャネル時代のマーケティングなのではないでしょうか。購入の時点のみに焦点を合わせるのではなく、その前後の時間に寄り添うことで、お客様が求めるものは見えてくるはずです。